はじめに
1年間も仕事休んで、何してんの?
育休が始まって間もない頃、知り合いに言われた一言です。
悪気はなかっただろうと思います。
けれど、言われた私は、なんだか心がザワザワしました。
振り返れば、まだそのときは、
自分が選んだ行動は、本当に正解だったのか?
不安を抱えている状態だったのでしょう。
しかし今となっては、はっきり言えます。
一年間の育休を取得して、悔いなし!
と。
かけがえのない、豊かな時間を過ごすことができたからです。

私は、迷いまくりながらも、妻とともに一年間の育休を取得した男性教員です。
今回は、育休を取るまでにどんなふうに葛藤し、復職した今どんなふうに感じているのか、感想をまとめた記事を書きます。
興味がある方は、ぜひご覧ください。
育休取得を考えている方の背中を、少しでも押すことができればと思っています。
育休を取るなんて、考えもしなかった過去の私
私には、ふたりの娘がいます。
一年間の育休を取ったタイミングは、次女の誕生直後と、生後数ヶ月した後の2回。



2回に分けた理由は、次女が産まれた当時、6年生を担任していたから。受け持つ学級の卒業は、見届けようと考えました。
育休をとるなんて選択肢は、なかった
実は、長女が産まれたときには、私の中に「育休を取る」なんて選択肢は一切ありませんでした。
妊娠中の妻に、
育休取る?
って言われて、
いや、俺はさすがに取れないよ?
と即答したのを覚えています。
「育休?男の自分が?ありえないでしょ」
と思ったのが正直なところです(今思えば時代錯誤すぎですね)。



妻には申し訳ない態度をとったと思っています。
思いは変わる
しかし長女を育てる中で、思いは変わっていきました。
人ひとりを育てるのって、本当に大変。
我が子は可愛いけど、泣きまくるし、てんで思い通りにいきません。
体力的にも、精神的にも、しんどい毎日。



昼間、ひとりで小さな娘と格闘しながら家事までこなしてくれる妻を、心からすごいと感じてました。
夜の八時や九時まで職場に残っているのが普通だった私は、できる限り仕事を早く切り上げ、帰宅を早めるようになりました。
少しでも妻の手助けをするべきだと思ったからです(後述しますが、「手助けする」って考え方も、まだまだ未熟だったと思います)。
そして、もしふたりめができたら、そのときは「育休をとろうかな」と考えるようになりました。
葛藤
けれど、葛藤もありました。
「みんなまだ仕事がんばってる。自分だけ帰っていいのか?」
「もうちょっとがんばるべきじゃないか?明日の授業の準備、ほぼしてないぞ?」
そんなふうに思う毎日。
仕事で「周りのみんなほどがんばってない」と感じ、罪悪感を感じる自分がいたんです。



周りと比べることに意味なんかないんですけどね。
帰宅を早めるために、仕事を焦りすぎて、けっこう大きなミスをしてしまったことも。
結局、自分のミスのせいで余計に帰宅が遅くなってしまったり、ズルズルと職場に残ってしまったりして、家庭との両立ができない日が多々ありました。
仕事も家庭もうまく立ち回れず、自己嫌悪に陥る毎日。



フラストレーションが溜まっていました。


将来への不安
将来への不安も、かなりありました。
この仕事を選んだくらいですから、「いい先生になりたい」って気持ちは、人並みにあったと思います。



何をもって「いい先生」というかは人それぞれでしょうが、私の場合は、キャリアアップも含まれていました。
いろんな学年・学級の担任を持てるようになりたい。
ある程度、なんでも校務分掌を務められるようになりたい。
必要ならば、外に研修に出てみたい。
わざわざ他人に、そんな上昇志向を持っているような話をした覚えはありませんが。



しかし事実、そう思っていました。
キャリアアップのためには、経験が欠かせません。
少しでも多くの経験を、早めに積むことが大事だと思います。
私が長女のときに、育休を取ることをつゆ程も考えなかったのは、
- 育休なんか取ったら、キャリアに穴が開く!
- 周りに「やる気がない」って思われる!
なんて思いが大きかったからだと思います。



このときの自分は、我ながらかっこ悪い(笑)
ずいぶん自己中心的だし、子育てをしながらキャリアアップしている女性の方に失礼な考えだと、今では思います。
結局長女が産まれて数年間、家庭の助けになるべきだと思いながらも、どこかでキャリアの心配をする自分がいました。
そんなときに、次女の妊娠が発覚したんです。
自分にとって本当に大事なものは、何?
改めて、本気で育休を取るか決断するときが来ました。
いろいろ葛藤はありましたが、私はシンプルに、自分に問うことにしたんです。
家族、仕事、収入。
どれが自分にとって大事か?
と。
私は素直に、
家族を大事にしたい
と思いました。



正確には、「家族を大事にする父親でありたい」という方が近かったと思います。
私自身が、仕事だけの父親より、家族を大事にする父親になりたかったんです。
でも思うだけじゃダメ。
行動しないと。
「育休をとる」って行動は、その第一歩。
そう考えた私に、今までの葛藤は、なくなりました。



心の底から、自分の意思で、育休を取ることにしました。
先述の通り、当時は6年生の担任を持つことが決まっていましたし、校務分掌の主任も担うことになっていました。
数年前の自分なら、仕事を休むなんて考えもしなかったでしょう。
けれど気持ちは揺らがなかったです。
その年に1ヶ月の育休を取ったのち、ほどなくして、次年度はまるまる一年間休むことも決めました。



育休を取ること自体に迷いはなくなっていたので、あとは期間の問題。
我が家の一年間の支出を想定し、現在の資産と照らし合わせ、まあ大丈夫だろうと踏みました。
なぜ取ることを悩んだ?と思えるくらいの豊かな時間
結果、いい決断ができた、と自信を持っていえます。



なぜ取ることを悩んだ?ってくらい。
一年間の育休は、家族のためにも、自分のためにも、とても豊かな時間でした。
家族との最高な時間
仕事のことを気にせず、家族とかかわれる時間をつくることができました。
早起きした長女と朝から公園に行ったり、保育園帰りに図書館に行ったり。
泣きまくる次女を抱っこしたり、寝かしつけたり。
平日昼下がりのスーパーに、妻と買い出しに行くのも意外と楽しかったです(笑)
毎日、何かしらやることがありました。



一年間、暇だと感じた日は1日もありません。
マジで。
平日に家族みんなでお出かけしたり、旅行に行ったりできたのもよかったです。
ふだん行けないところに、連休期間や祝日じゃありえない安い費用で、出掛けることができました。



思い切って休みを取らないと、あんな楽しい家族との思い出はできませんでしたね。
一年間、心から家族とかかわることができました。


自分にとっても最高な時間
一年間の育休は、私自身にとっても、最高でした。
まず、リフレッシュできたことが大きい。
仕事と家庭の両立がうまくできず、フラストレーションが溜まっていた私にとって、育休期間は大きなリフレッシュになりました。
もともと不器用な私は、思い切って1年仕事を休んで、正解だったと思います。
不器用な上に、「妻を手助けする」くらいの気持ちしかないんじゃ、助けになれるはずなかったんです。
自ら育児できる環境づくりをして、主体的に動くことが大事だった
と、育休を取ってみて感じました。



働いているときの数十倍、家族の力になれたと思います。
それに、意識高いことを言うつもりはありませんが(笑)、自己研鑽できたことも大きいです。
育児の合間に、ふだん読めなかった本をたくさん読めました。
離乳食づくりができるようになったし、自炊のレパートリーも増えました。
「使ってみたい」と思いながらも、ハードルの高さを感じていたAIツールに触れ、実際に活用できるようになりました。



CanvaやChatGPT、Copilotなどを使ってみましたね!
育休を取る前の自分よりは、レベルアップしている実感があります。
とくにAIツールは、復職後の現在、大いに役立ち中!
育休中に触ってみて、本当によかったです。



私を横目で見ていた妻も、今ではAIを駆使して仕事の効率化を図っています(笑)
お金は、なんとかなった
気になるお金面ですが、結論、なんとかなりました(笑)
もともと我が家は、妻とともに資産形成を進めている最中なので、生活費は意識して抑えています。
我が家の場合、3ヶ月ほど夫婦ともに無収入期間があり、そこはちょっと痛かったかもしれません。
しかし過ぎ去ってみればまあ、かすり傷くらい(笑)



育休中の豊かな時間のほうが、100倍価値があると思ってます。
ちなみに、復職後はじめてもらった給料は、思ったより手取り額が増えていました。
なんか嬉しかったです(笑)
我が家のように、夫婦ふたりで1年もの育休を取ると、さすがに収入減が気になります。
ただ教員の場合、生後半年までの育休であれば、ほぼほぼ働いているときと同額の手当て金がもらえるんですよね。
収入面だけでいえば、生後半年までの育休取得は、ほぼ心配する必要なしといえるでしょう。



もし、お金だけが悩みの種なら、育休は取ったほうがおすすめです!
結果、キャリアに穴なんて空いてない
もうひとつ、漠然と抱えていたキャリアの不安について。
まだ復職してちょっとですが、育休を取ったからって、キャリアに穴なんて空いてないなって感じます。
自分がいなくなると、困るよね?
とか思っちゃいますけど、いないならいないで、なんとか回してもらえます。
逆に復職後は、一年間のブランクなんてなかったかのように、毎日が過ぎていきます。



りこぴん先生は一年間休んでたから、◯◯を任せるのはやめとくわ。
みたいな配慮も、申し訳ありませんが、今のところ特にないです(笑)



そりゃそうですよね。
人手不足ですから。
それに、育休を取ったことで、「育児にかかわっている」と思われたからでしょうか。
職場で接する保護者たちも、子どものことについて、以前より親身に話してくれる気がします。
読書したり、AIツールに触れたり、単純にスキルアップもできました。
キャリアに穴が開くどころか、人として、大きくレベルアップができた実感があります。
人手不足の教員界。
それなりの気持ちと体力があれば、育休を取ろうと取るまいと、男性だろうと女性だろうと、きっとキャリアアップはしていけるでしょう。
とくに、「育休取得経験のある男性教員」は、まだまだレアな状況。
必ずや新しい風を吹かせることができるはず。
育休はけっして、キャリアに穴を開ける行為ではないと思います。



むしろ、ただ惰性で仕事を続けるより、ひとまわりもふたまわりも成長できるのでは?
おわりに
私が一年間の育休で得たものは、「豊かな時間」と「自分自身の成長」です。
家族のためにとったつもりの育休でしたが、私自身のためにもなったと思います。
冒頭にお話ししたとおり、育休に入る前も、入った後も、まだまだ不安でいっぱいだった私。



けれど振り返れば、家族にとっても自分にとっても最高の時間でした。
身の回りで、育休を取る男性教員が、少しずつ増えています。
つい最近、仲のいい男性教員が、第一子の誕生に合わせて育休を取ると聞きました。
第二子の誕生で、やっとこさ育休を取得した私から言わせれば、すごくかっこいいです。



壁はありますが、パパ教員の育休は、すばらしいものだと思います。
だって、教員は他にもいるけど、子どもにとっての親は、ひとりだけですから。
そして家族と過ごす時間は、親自身にとっても、かけがえのない人生の1ページになるはずですから。
いい意味で、「仕事が全てではない」と思えるようになります。
ひとりでも多くの教員が、仕事でも家庭でも笑顔になってくれれば。



私の思いや経験が、読んでくださった方の助けになれば幸いです。
5000字近くの長文になってしまいましたが、ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
ではまた!
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